変形胃に対する撮影法の工夫(ルーチン・精密検査)

第6回 胃X線精度管理研究会 久留米大会2007. 3.24パネルディスカッション瀑状胃・牛角胃に対する撮影法の工夫 まとめ(一部抜粋)

瀑状胃・牛角胃の定義(久留米大学 中原慶太先生)



① 牛角胃:充盈像部の最上縁と最下縁を結んだ長さが 3椎体以下と短いもの
② 瀑状胃:穹窿部の最下縁が分水嶺より 1椎体以上 足側に位置するもの
③ 1 +2 瀑状・牛角胃:上記を両方満たすもの


1. 撮影と読影上の問題点
1-1. 陥りやすい点
  ① 宮崎 バリウム・空気流出、造影効果不足、示現範囲不良
  ② 高橋 バリウム・空気流出、ブレを生じやすい
  ③ 大角 胃のねじれを生じやすい、造影効果不足
  ④ 稲葉 バリウム・空気、付着状態のバランスがとりにくい
  ⑤ 宮城 バリウム・空気、付着状態のバランスがとりにくい
  ⑥ 田宮 バリウム・空気流出、造影効果不足、示現範囲不良
  ⑦ 杉野 バリウム・空気流出、造影効果不足、撮影条件不良


1-2. 盲点になりやすい部位
  ① 宮崎 ML領域前壁・後壁、U領域後壁
  ② 高橋 UM領域後壁大彎側、幽門前部
  ③ 大角 ML領域前壁・後壁、U領域
  ④ 稲葉 UML領域全体の小彎側
  ⑤ 宮城 ML領域前壁、U領域
  ⑥ 田宮 ML領域前壁・後壁、U領域全体、 幽門前部
  ⑦ 杉野 ML領域前壁小彎側・後壁大彎側、幽門前部

2. 撮影条件:厚い腹厚に対するブレ対策
 ① 宮崎 DR、ATR使用:大焦点、90~100kv、320mA以上で短時間撮影
 ② 高橋 DR、ATR使用: 84~94kv、160~200mA、Back timer 0.1sec
 ③ 大角 DR/FPD、ATR使用:濃度安定化を目的とした分割撮影
 ④ 稲葉 間接、ATR使用: Photo-tap 2~3up、絞り、管電流を上げる
 ⑤ 宮城 DR、ATR使用: 通常より高電圧気味
 ⑥ 田宮 FPD、ATR使用:大焦点、84~105kv、320mA以上で短時間撮影
 ⑦ 杉野 DR/FPD、ATR使用:適切な位置取り、通常より高電圧気味

3. バリウムと発泡剤:量、飲ませ方、時期
 ① 宮崎 最初が肝心。発泡剤 5g先行投与、半立位でバリウム飲用。
 ② 高橋 食道撮影を迅速に行い、腹臥位第二斜位で透視台を倒す。
 ③ 大角 バリウム少量飲用後に胃を鈎状胃に整復。食道撮影を後回しする。
 ④ 稲葉 伸展過多を防止するため、発泡剤 2.5gを 2回に分けて飲用。
 ⑤ 宮城 検査前に胃内空気量を確認。バリウムと空気を少なめから開始。
 ⑥ 田宮 発泡剤 5g先行投与、半立位でバリウム飲用. 腹臥位で透視台を倒す。
 ⑦ 杉野 バリウム少量飲用後に胃形を確認

4. 体位変換方法:胃全体の良好な洗浄、小腸流出対策
 ① 宮崎 水平位右下 360度回転変換を基本。
 ② 高橋 水平位右下360度回転変換。透視台の起倒を利用して行う。
 ③ 大角 U領域に対して軽度逆傾で右下 360度回転変換。
 ④ 稲葉 水平位右下 360度回転変換を基本。
 ⑤ 宮城 水平位右下 360度回転変換を基本。
 ⑥ 田宮 U領域に対して軽度逆傾で右下 360度回転変換。バリウムやや多め。
 ⑦ 杉野 水平位右下 360度回転変換。空気の流出にも留意。

5. 領域別にみた撮影手技のコツ
5-1. ML領域後壁
  ① 宮崎 検査後半に半立位で空気少量気味の撮影を行い接線領域を減らす。
  ② 高橋 空気過伸展よりも空気少量気味での撮影を心がける。
  ③ 大角 透視台の起倒で前庭部の空気を減らしてねじれを極力防止。
  ④ 稲葉 強い第1斜位として分割撮影する場合あり。
  ⑤ 宮城 バリウムは多めで、空気量調節を 2段階にして撮影。
  ⑥ 田宮 透視台の起倒で前庭部の空気を減らしてねじれを極力防止。
  ⑦ 杉野 空気過伸展に注意し、幽門部が検出器と平行になるようにする。


5-2. ML領域前壁
  ① 宮崎 必ず枕を使用する。
  ② 高橋 発泡剤を追加することが多く、幽門部、胃角部、体部の順で撮影。
  ③ 大角 厚めの枕を牛角胃では体上部小彎、瀑状胃では体上部全体に敷く。
  ④ 稲葉 フトンとヒップアップ併用。
  ⑤ 宮城 バリウムは少なめで、空気量調節を 2段階にして撮影。
  ⑥ 田宮 厚めのバスタオルで鈎状胃形に矯正して撮影。右腰を極力上げない。
  ⑦ 杉野 空気過伸展に注意し、幽門部が検出器と平行になるようにする。


5-3. U領域
  ① 宮崎 透視台角度の微調整。
  ② 高橋 穹窿部にバリウムを溜め、立位前傾にてバリウムを流して撮影。
  ③ 大角 透視台角度の微調整、枕を積極的に使用する。
  ④ 稲葉 上体を出来るだけ起こさないようにして体位変換を心掛ける。
  ⑤ 宮城 バリウムは多めで、空気量調節を 2段階にして撮影。
  ⑥ 田宮 透視台角度の微調整、バリウムは多めで体位変換、おじぎを利用。
  ⑦ 杉野 第二斜位から右側臥位を連続的に撮影。

6. 圧迫方法:肥満体格に対する工夫
 ① 宮崎 前壁撮影時の厚いフトンを利用した腹臥位圧迫。
 ② 高橋 空気量は少ない状態が望ましい。 
 ③ 大角 透視台を倒しバリウム量を減らし気味にして圧迫する。 
 ④ 稲葉 検査後半の立位第1斜位撮影前に圧迫する。
 ⑤ 宮城 粘膜法、バリウム少量圧迫、充盈像後の圧迫。
 ⑥ 田宮 前壁撮影時の厚いフトンを利用した腹臥位圧迫。
 ⑦ 杉野 胃が上方に位置して圧迫不能の場合あり。